「人生がときめく片づけの魔法」でカタをつける!

あまりに不真面目で不定期にしか更新しないブログですが、ちょこっとのつもりで読んだ本が、意外に面白く、忘れてしまうのももったいないので、備忘録程度に書評を!

 

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電車のドア張り広告でよく見かけた方も多いのではないだろうか。「ときめく」だの「魔法」だの、、なんて乙女な言葉、役職付きのおじ様方に向かって言ったら「黙殺!」されそうな淡い色調が、かえって印象的な本で、正直言えば広告を見ていた時は「サンマークさんまたやっちゃって。。。」とも思っていた。(でも、マーケティング的には正しい!とも)

 

ちょっと、Amazonのブックレビューを覗いてみると、案の定、星一つの「辛口」書評をつけてる人は、私が無作為にざっと10人程度見てみても、男性で、そこそこ年齢の上の人が多い印象だ。これは予想だが、、20代後半から30代前半の男性層は「そもそも読んで無さそう」な気もする。。。恐らく若い男性の辞書に「片づけ」という言葉は載っていないのだろう。

 

そして、これまた予想通り、最高評価の星五つを付けているのは女性が多い。著者である「こんまり」さんのクライアントの多くが、女性であることも関係しているが、一般的に「共感能力が高い」とされている女性層に、この若き「片づけコンサルタント」の最も伝えたいことが、スイートスポットにハマったかの如くに感じられるのだと思う。

 

実は私は「片付け系」の本はこれまで一冊も読んだことが無く、今回の「人生がときめく片づけの魔法」が初体験である(笑)

 

というのも、私も自他共に認める「片づけ魔」で、こんまりさんが学生時代から「追及」してきたことを、私も実践してきた経験がある。

だから「あるある!わかるわかる!」で楽しく読んでしまった。

 

彼女の提唱する具体的な「方法論」は私が至った結論とほぼ一緒だし、陥った(?)失敗もほぼ一緒だった。

 

だた、彼女の方が数百倍ウワテで、自分の身辺のみならず「他者」への個別ケースにまで身を投じているところに「プロフェッショナル」としての底堅さを感じる。ふんわりとあどけない印象の著者の外見だけで、全てを判った気になるのは早計だろう。

 

何よりも、この著書がアメリカで大変にヒットし「もっとも影響を与えた100人」に、こんまりさんが選ばれている事実だ。

辛口に「はすに構えた書評」をしているおじ様方も今一度、「なぜ評価されているのか」をじっくり考えるだけの価値があるのではないかと思うし、今回私が読もうと思った動機もそこにある。

 

具体的な整理方法は、おこがましいながら「この方法で間違って無かった」と、ほのかな自信に繋がる感じで、あまり「大きな発見!」は無かったが、むしろ最も参考になったのは

 

「片づけが苦手な家族」との関係のあり方

 

だ。

私事で恐縮だが、家族親類で「片づけレベル」が同じなのは、実の父だけで、それ以外(母、妹、夫、子ども達、従兄弟、叔母)残念ながら「う〜ん」ということが多い。

 

母はリサイクルショップで買って来たものを、やっぱり自分では使わないと「押し付け」ようとするし、従姉妹が「捨てられない子ども服」が叔母(もったいないと拾って来る人)→母(やっぱりもったいないと思うけど必要無い人)、経由でやって来てしまったこともある。

「捨てられない人の代わりに捨ててあげる役」をやりっぱなしで、正直「自分がすり減る」時期もあったのだが、こんまりさんは著作の中で

 

「お母さんも自分だけのテリトリーを持って、まずそこを徹底的に納得行くまで綺麗に整理しておく。」

 

という記述に「ああそうだ!そこがまず先だ!」と気づかされた。

「捨てられない家族にイライラするときは、まず自分の中に原因がある場合が多い。」とは、多くのケースを見て来ている人ならではの視点だろう。

 

私も、数年前から「自分だけの部屋」を勝手に作って、その中に好きなもの、気に入っているものを置いて「気の済むまで整理」したところ、それ以前よりもぐっと「家族の散らかし」に対する不満度合いが低くなった(決して消えた訳では無いけれど)

 

辛口書評の中には

「家族持ちの解決方法が書いとらん!これは若い独身女性の為にしか役にたたん!」

などと書いている人も居たが、評者は読み落としているだけである。

彼女はちゃんと、体験を踏まえて示唆している。

 

「まずは自分の範囲を整える。その影響は少なからず家族にも影響を与える。」

 

片づけが得意な人は、ともすると「散らかし屋さん」や「押し付け屋さん」からの被害者意識に苛まれてしまうが、方法はいろいろ工夫しながらも「要らない」と言い続ければその意思はそのうち伝わってゆく(前述の騒動も、相当に嫌な顔をしたらそれっきり二度目は無かった!)

 あまりに「片づけ好き」が身辺では少数派なので、自分の方が「気がおかしい」のではないのかと、悩んだこともあったが、この著作がこれだけの反響を起こしているのは、それだけ、実際の悩みが深いのだと思う。

 

子ども達もある程度の年齢になったら「自分の範囲」を与えて、そこを整える練習をさせた方が、個々に落ち着くんだなぁ、、というのも、実体験でも感じている。

 

そして、最後に最も大事だと思われるのは、やはりこの著作の根幹を成すキーワード

 

「その物に触れて『ときめき』を感じるかどうか」

 

の一言に尽きる。

私は、アメリカで受けている最大の理由はこれでは無いかと思った。

 

この「その物に実際に触れて確認する」を、逃げ無しに、実直に「毎ケース絶対に実行する」彼女のプロ意識には、本当に脱帽するが、この言葉をもう一段深く解釈出来る手がかりが、著作の後半に出て来る。

 

「モノがここへ来た来歴と、その役割を真摯に考え、ちゃんと送り出す」

 

彼女の「モノ」に対する向き合い方は、それだけ真剣なのだ。そしてその真剣さは、実は日本人が無意識レベルで持っている、「万物に宿る霊」を尊ぶ、非常に原初的な宗教観に案外通じているんだな、、という感想を持った。

 

今では、あまり意識しなくなったが「〇〇供養」(針でも人形でも、はたまた、お飾りでも。。)という行事が、どんな地方でも残っていると思うが、「役割を終えて送り出す」という知恵は、温暖湿潤な気候を持つ日本やアジア地域では、とても必要なことだったのかもしれない。

 

「モノの一つ一つを真剣に考える」が故に、「捨てられない」という状況にも陥るし、「だからこそ送り出す(捨てる)」という解も取れる。相反する二つの行為は、実は「物事の裏と表」なのかも知れないと気づかされた。

 

滞ったものをそのままにしておくのは「物」に対して、はたまた「自分」に対して、蔑ろにしているとも言え、その「小さな蔑ろ」が社会全体へ及ぼす影響を、侮ってはいけないなぁと気づかされる内容だった。